本助成金を活用する上で、どのような企業が対象となり、どのような訓練が支給対象となるのか?
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の活用において、対象となる企業と訓練の概要は以下の通りです。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の支給対象となる事業主は、以下の要件を満たす必要があります。
• 雇用保険適用事業所の事業主であること。
• 事業内職業能力開発計画の策定と周知:労働組合等の意見を聴いて作成した事業内職業能力開発計画、およびこれに基づく職業訓練実施計画を雇用する労働者に周知していること。
◦ 事業内職業能力開発計画は、自社の人材育成の基本的な方針などを記載する計画であり、従業員の職業能力開発について経営者や管理者と従業員が共通認識を持ち、目標に向かって進めることで効果的な能力開発が期待されます。
• 職業能力開発推進者の選任:研修や人事の担当課長など、従業員の職業能力開発および向上に関する企画や訓練の実施に関する権限を有する者を、事業所ごとに1名以上選任していること。
• 賃金の適正な支払い:訓練等を受ける期間中、対象労働者に対して賃金を適正に支払っていること。
◦ eラーニング、通信制、定額制サービスによる訓練の場合も、支給対象訓練は業務上義務付けられ、労働時間に該当するため、訓練中に賃金を支払う必要があります(育児休業中訓練を除く)。
◦ 所定労働時間外に訓練を実施した時間は賃金助成の対象外ですが、労働契約書や就業規則に所定労働時間の変更がありうる旨が明確に記載され、訓練開始前に具体的な変更内容が労働者に明示・周知されていれば、変更後の時間を所定労働時間として助成対象時間を算定します。
• 書類の整備と保存:助成金の支給・不支給決定に係る審査に必要な書類等を整備し、支給決定後5年間保存していること。
• 審査への協力:管轄労働局長が必要と認める書類の提出・提示、または実地調査に協力すること。
• 事業展開等実施計画の作成:「事業展開等実施計画」(様式第1-3号)を作成する事業主であること。
• 離職割合の制限:計画届提出日の前日から1年前までの間に、人材開発支援助成金の支給を受けたことがあり、かつ離職した支給対象労働者の割合が50%以上であったことが2回以上ないこと。
中小企業事業主の範囲 中小企業事業主かどうかの判断は、主な事業内容に応じて、資本金の額または出資の総額、または常時雇用する労働者の数によって行われ、支給申請時点の内容で決定されます。中小企業には高い助成率が適用されます。
支給対象とならないケース 以下の場合は、助成金が支給されません。
• 不正受給から5年以内(不支給措置期間)に申請した場合。
• 助成金の公表や返還等について承諾していない場合。
• 労働関係法令の違反があった場合。
• 提出した書類に虚偽の記載があった場合。
• 審査に必要な書類を提出しない、または実地調査に協力しない場合。
• 計画届の提出期間や変更届の提出期限、支給申請期間を遵守しなかった場合。
• 事業主が訓練経費を全額負担していない場合。
事業展開等リスキリング支援コースの対象となる訓練は、企業が持続的発展のために新規事業の立ち上げなどの事業展開に取り組む場合、または企業内で業務の効率化や脱炭素化を図るためにデジタルやグリーン分野の技術を活用できる人材を育成する場合に、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練です。
基本的な要件
• OFF-JT(Off-the-Job Training)であること:生産ラインや就労の場における通常の生産活動と区別して行われる訓練である必要があります。
◦ 自社の事務所や営業所で行われる場合でも、生産ラインに従事せず、就労の場以外の場所(会議室など)で行われることを労働局が審査で確認することがあります。
• 実訓練時間数が10時間以上であること:ただし、eラーニング及び通信制の訓練の場合は標準学習時間が10時間以上または標準学習期間が1か月以上、定額制サービスによる訓練の場合は、支給対象労働者の受講時間数(標準学習時間)の合計が10時間以上である必要があります。
• 計画に基づく実施:職業訓練実施計画届に基づき行われる訓練であること。事前に訓練カリキュラムを作成し、計画届を提出し、その計画に沿って訓練を実施する必要があります。計画内容に変更が生じた場合は、変更届を提出する必要があります。
• 職務関連訓練であること:対象となる訓練は、職務に関連した専門的な知識および技能の習得を目的とするものである必要があります。訓練を受ける労働者の職務により対象となるかどうかが判断されます。
◦ DX・GX推進に関連する訓練の例:
▪ 医療系システム開発企業が「農業支援システム」開発のため、エンジニアを農業システム関係の学校に通わせる。
▪ 建設現場で3次元設計などのICT技術を取り入れている事業主が、よりDXを推進するため、または維持するために3次元設計に関する訓練を実施する場合。
▪ 営業部門におけるITツールを活用したWEB集客講座、土木や建築工事における3次元設計などのICT技術習得講座など、デジタル技術の導入による効率化や省力化を図ることに伴い、当該職務に従事することとなる労働者に必要な訓練。
▪ 一般的なアプリケーションの活用方法を理解する訓練であっても、初歩的な操作にとどまらず、具体的な業務効率化のための技術や知識習得を目的とする場合は助成対象となり得ます。
▪ 経営方針にDX推進が盛り込まれているが、計画届提出時点で具体的な取り組みが決まっていない場合でも、DX戦略を事業活動に反映させるための企画・立案業務に従事する担当者に対し、具体的な手法等を習得する訓練は対象となり得ます。
▪ ドローンやBIMを活用した測量作業の習熟訓練。
▪ 食品製造現場のデジタル化推進(デジタル計測・自動記録導入)のための座学と実践。
▪ ドローンによる農薬・肥料散布の導入(CO2排出量削減)のための農業ドローンオペレーター認定講座。
▪ ICT施工や持続可能な建材の活用に向けたICT施工技術の習得。
▪ ドローンを用いた空撮撮影による温室効果ガス排出量低減のためのドローン操縦士資格取得。
◦ 事業展開に伴う訓練の例:
▪ 医療系システム開発企業が「農業支援システム」開発のため、エンジニアを農業システム関係の学校に通わせる。
▪ カーナビ画面フィルム製造企業がゲーム機専用フィルム開発のため、専門講師を招いて開発ノウハウを習得させる。
▪ ホテル経営事業主が観光ツアー部門立ち上げのため、大型二種免許取得訓練を実施する。
▪ 和菓子屋がネット販売部門設立のため、ECサイト立ち上げや運営に関する講座を受講させる。
▪ 運送業の需要減に伴い「福祉タクシー」事業を展開するための第二種普通免許取得訓練。
▪ クリニックが児童発達支援施設を新規展開するための職員向け研修。
▪ ソフトウェア開発企業がUI/UXデザインチーム立ち上げのため、UI/UXデザイナー向けオープン研修を受講させる。
▪ 手動旋盤加工からCNC旋盤加工による新製品開発のため、ターニングセンタミーリングコースを受講させる。
▪ 半導体事業開始のため、シーケンス制御による電動機制御技術講座を受講させる。
▪ システム開発事業立ち上げのため、ITコンサルタント養成や開発スキルに関するデジタル人材育成プログラムを受講させる。
• 事業展開の実施時期:事業展開は、訓練開始日(定額制サービスによる訓練の場合は契約期間の初日)から起算して3年以内に実施する予定、または6か月前までに実施したものである必要があります。
訓練の実施方法ごとの要件
• 通学制・同時双方向型の通信訓練:
◦ 実訓練時間数が10時間以上であること。
◦ 実訓練時間数の8割以上受講すること(特定の訓練機関の修了・卒業で代替可)。
◦ 事業内訓練の場合は、部内講師または部外講師が一定の要件を満たす必要があります。
▪ 部内講師は、申請事業主の役員等または雇用されている者で、訓練実施日の出勤状況・出退勤時刻が確認できる者。
▪ 部外講師は、部内講師以外の社外の者。
◦ 事業外訓練の場合は、教育訓練機関が特定の訓練機関または民間の教育訓練機関の要件を満たす必要があります。
• eラーニング・通信制:
◦ 標準学習時間が10時間以上または標準学習期間が1か月以上であること。
◦ 訓練期間中に訓練を修了すること(LMSや添削課題で実施状況が確認できること)。
◦ eラーニングはLMS等により訓練の進捗管理が行えるもの。
◦ 通信制は教材提供、設問回答、添削指導、質疑応答等が行われるもの。
◦ 事業内訓練として実施する場合は、助成対象外となります。
◦ 民間の教育訓練機関が実施する場合は、計画届提出日時点で自社ホームページに訓練情報が掲載されていることが必要です。
• 定額制サービスによる訓練:
◦ 各支給対象労働者の受講時間数(修了した訓練の標準学習時間)の合計が10時間以上であること。
◦ 訓練期間中に訓練を修了すること(LMSや添削課題で実施状況が確認できること)。
◦ 一訓練あたりの対象経費が明確でなく、同額で複数の訓練を受講できるeラーニング及び同時双方向型の通信訓練で実施されるサービス。
◦ 事業内訓練として実施する場合は、助成対象外となります。
◦ 定額制サービスに含まれる講座全体に占める支給対象外訓練(趣味教養型など)の割合が5割以上である場合は、支給対象外となります。
◦ 訓練の実施期間は1年以内。
◦ 既に契約済みの定額制サービスでも、契約期間の初日が令和4年12月2日以後であれば、計画届提出日から1か月後を契約期間の初日とみなして助成対象となり得ます。
◦ 複数の適用事業所を持つ法人が法人単位で契約した場合、主たる適用事業所が申請手続きを行い、10時間要件は事業所ごとに満たす必要があります。
複数の実施方法を組み合わせた訓練
• 内容に連続性があり、一連のものとして受講することで訓練目的を達成すると判断された場合は、1つの訓練として計画可能です。ただし、定額制サービスによる訓練は、通学制など他の方法で実施される訓練と組み合わせて実施することはできません。
• eラーニングまたは通信制を事業内訓練として実施し、通学制など他の方法と組み合わせる場合、通学制の部分は支給対象となり得ます。
• 各訓練の実施方法に応じて、それぞれの支給要件を満たす必要があり、訓練時間数は合算して10時間以上であるかで判断されます。
予習・復習の取扱い
• 訓練の受講前後に行われる予習や復習(宿題、事前学習、確認テストなど)の時間は、総訓練時間数や実訓練時間数に含めません。ただし、その実施が業務上義務付けられている場合は労働時間に該当するため、賃金を支払う必要があります。
• 予習・復習が主目的となっていると判断される場合や、eラーニングまたは通信制に該当する場合は、支給対象訓練として取り扱われることがあります。
支給対象とならない訓練の例
• 職務に間接的に必要となる知識・技能の習得(例:普通自動車運転免許取得講習)。ただし、DX・GX推進に必要な場合は除く。
• 職業人として共通して必要となる基礎的なスキル(例:接遇・マナー講習)。ただし、DX・GX推進に必要な場合は除く。
• 趣味・教養を身につけることを目的とするもの(例:日常会話程度の語学、話し方教室)。
• 通常の事業活動として遂行されるもの(例:コンサルタントによる経営改善指導、品質管理マニュアル作成、自社製品説明、研究活動)。訓練時間中にアプリケーションを用いて実際の事業活動で利用するツールを作成する場合も、通常の事業活動とみなされる可能性があります。
• 労働者の職業能力開発に直接関連しないもの(例:時局講演会、研究会、見学会、オンラインサロン)。
• 法令等で実施が義務付けられている講習(例:労働安全衛生法に基づく特別教育)。ただし、労働者にとって資格取得のための法定講習(例:土木施工管理技士、介護福祉士)は対象。
• 職業または職務に関する知識・技能の習得を目的としないもの(例:意識改革研修、モラール向上研修)。
• 資格試験や適性検査のみ。
• 労働者が自発的に行うもの(育児休業中訓練を除く)。
• 教材提供のみで、設問回答、添削指導、質疑応答等がない通信制訓練。
• 特定の事業主向けに提供されるeラーニングや通信制訓練(定額制サービスを除く)。
• 専らビデオのみを視聴して行う講座(eラーニング、通信制、定額制サービスを除く)。
• 海外、洋上で実施するもの。
• 生産ラインまたは就労の場で行われるもの。
• 通常の生産活動と区別できないもの(例:現場実習、営業同行トレーニング)。
• 適切な講師要件を満たさない者による訓練。
• あらかじめ定められた計画通りに実施されない訓練、年次有給休暇を与えて受講させる訓練、教育訓練機関として不適切と思われる設備・施設で実施される訓練、文章・図表等の教材を使用せずに行う講習・演習。
ご不明な点や具体的な相談がある場合は、管轄の労働局またはハローワークにご相談ください。